「羊は嫌い?」と彼女が訪ねた。
「羊は好きだよ」と僕は言った。
村上春樹."羊をめぐる冒険" .講談社.2004.p.176.
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羊は古代から人類と共にありました.
羊が家畜化されたのは古代メソポタミアで紀元前7000-8000年前と言われています.
羊毛は衣服に用いられ,肉や乳は貴重なタンパク質・脂肪として人間に利用されてきました.
しかし,日本で羊が家畜となったのは明治以降の短い歴史しかありません.
北海道から日本の近代化を先導するために設立された札幌農学校を継ぐ,北海道大学の農場に
羊がいることは,明治以降の近代化・西洋化の象徴のひとつと言えるでしょう.
北大の羊は近代の象徴・西洋の象徴として生まれ育ち,草を喰み,惰眠を貪るのです.
牧歌的に見える羊の姿の裏側には,メソポタミア以来拡大を続け,
ユーラシア大陸の西で生じた産業革命を支え,ユーラシア大陸の東端の列島にも
強力な文明の先導として到来したのでした.
漫画版風の谷のナウシカには以下のようなあらすじが書いてあります.
ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は
数百年のうちに全世界に広まり
巨大産業社会を形成するに至った
大地の富をうばいとり大地をけがし
生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は
1000年後に絶頂期に達し
やがて急激な衰退をむかえることになった
「火の7日間」と呼ばれる戦争によって都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し
複雑高度化した技術体系は失われ
地表のほとんどは不毛の地と化したのである
その後産業文明は再建されることなく
永いたそがれの時代を人類は生きることになった
宮崎駿."風の谷のナウシカ".徳間書店.1983-1995.
ユーラシア大陸の西部で古代から家畜化された羊は工業製品として利用される文明の象徴です.
もし永いたそがれの時代を迎えようとも,羊たちは人類の文明の影を負いながら,
人類と共にあるでしょう.
羊
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