3. 各実験室のアクティビティー
本年度はインターネットによる
ホームページ(http://www.geo.titech.ac.jp/yurimotolab/sims/sims.html)
の試験運用を行った。このホームページを利用して、インタ
ーネットを通じて分析機器の予約等を行うシステムを開発した(国広卓也のプログラ
ムによる)。次年度はインターネットを本施設の運営に本格的に活用していく。以下
に各実験室の本年度の進歩と次年度への計画をまとめる。
3.1 化学ラボ
ICPMSの立ち上げにあわせ試料化学処理環境の整備を行った。本年度は、希土類元素
及び鉛分析に焦点をおき、岩石中の希土類元素の定量分析および低レベル汚染環境で
の鉛処理環境が実現できた。特に、強アルカリ洗浄剤を用いた洗浄法の確立により、
鉛・水銀を含むほとんどの分析元素について検出限界以下(現行のLPS超微量元素分
析装置による分析)のクリーン化を達成した。次年度には、人体に有害である王水(
濃塩酸と濃硝酸の混酸)を扱わない洗浄法の確立をめざす。
3.2 ICP-MSラボ
3.2.1 装置立ち上げ日程
本年度は2台のICP質量分析計(超微量元素分析用ICP-MS、超高精度同位体分析用ICP-
MS)が立ち上げられた。超微量元素分析用ICP-MS(PlasmaQuad)は、昨年4月に設置
が修了し、岩石中の希土類元素の定量分析が可能となった(小宮 剛氏による)。ま
た、12月には、感度向上のための真空ポンプの増設を行い、元素検出感度を従来のシ
ステムのおよそ10倍に高めることができた。超高精度同位体分析用ICP-MS(Plasma-5
4)は、昨年5月に本体立ち上げが修了し、4カ月にわたる基礎データの取得の後、9月
から本格稼働に入った。全地球史解読計画の目標であるウランー鉛年代測定法にむけ
た高精度鉛同位体分析法の確立をめざし、12月に新しい同位体差別効果補正法を開発
し、目標としていた鉛同位体分析精度が達成できた。本年度は、大きなトラブルはな
く、4月に高圧電源およびターボ分子ポンプ電源の故障があったのみ。
3.2.2 ICP-MSラボの今年度の進歩
- 超微量元素分析用ICP-MSの立ち上げおよび元素検出感度の向上(10倍)
- 岩石中の希土類元素定量分析法の確立(英国サウザンプトン大学・仏グルノーブ
ル大学との共同実験、論文受理)
- 超高精度同位体分析用ICP-MSの立ち上げ及び鉛同位体分析法の開発(論文投稿中)
- レーザー導入法による鉄隕石中の白金族元素分配(サウザンプトン大学との共同
実験、論文投稿中)
- 超高精度同位体分析用ICP-MS用高感度検出器(AMI)システムの設計・製作
- 紫外レーザーシステムの立ち上げおよび特性評価
3.3 SIMSラボ
3.3.1 運転日数
今年度のSIMSの運転日数は312日(稼働率85%)であった。運転停止日数(53日)の
内訳は定期保守17日、停電断水15日、故障修理21日(内電気系統10日、チラー1日、
真空10日)である。平成5年度の運転停止日数は88日なので、今年度は35日少なくな
っている。
3.3.2 今年度の進歩
- 二次イオンパルスカウント回路の高速化。
この改造によりイオンカウントシステムの不感時間が25ns以下(これまで35ns
)になった。
- 二次イオンのプロジェクターレンズの倍率の変更。
AMIシステムの開発をするため、プロジェクターレンズの拡大率を小さくした。
- イオン像観察用CCDカメラの設置。
初心者への教育のため顕微鏡のかわりにCCDカメラによりイオン像を観察でき
るようにした。
- 新型AMI検出器の開発を開始。
AMI真空チャンバとAMI駆動のための基礎回路を製作した。
[目次へ]
[前頁へ]
[次頁へ]