正準変換

previous(Poisson括弧の交換関係と量子化) もどる next(正準変換-1:母関数の方法)

正準変換とは

点変換のもとでは、Euler-Lagrange方程式は形を変えない、すなわち共変的であった。一方、Hamiltonの運動方程式は、変数として正準変数$q,p$を用いているので、$q$のみを変える点変換よりも高い自由度を持つ変換で共変的であることが期待できる。この変換を1次元力学系について具体的に書くと、 \[q\mapsto Q=Q(q,p),\quad p\mapsto P=P(q,p),\quad H(q,p)\mapsto K(Q,P)=K(Q(q,p),P(q,p))\] なる変換で、かつ、 \[\dot{Q}=\frac{\partial K}{\partial P},\quad \dot{P}=-\frac{\partial K}{\partial Q}\] が成立するものである。これを正準変換(Canonical transformation)という。

正準変換後の一般化座標$Q$や一般化運動量$P$には、もはや「座標」や「運動量」というような直接的な意味はなく、より抽象的な概念となっている。この抽象化の概念は大事であり、逆を言えば、ある問題で、二つの変数がHamiltonの正準方程式と同じ形式の方程式を満たすならば、その問題を力学の問題のように扱うこともできる事を示唆する。このことの詳細ついては、Hamilton系のページで説明する。

また、相空間という視点で見れば、正準変換は、既存の相空間から新たな相空間への移行、あるいは、相空間内の座標変換としてとらえることができる。よって、正準変換を知ることは相空間の本質を知ることに等しく、相空間そのものの性質を明らかにするための、「相空間の幾何学」を考えることもできる。この「相空間の幾何学」はシンプレクティック幾何学(Symplectic geometry)と呼ばれ、数理物理学において研究が盛んにおこなわれている。


previous(Poisson括弧の交換関係と量子化) もどる next(正準変換-1:母関数の方法)

Copyright (C) Matsuoka Ryo All Rights Reserved.
Last update: 2020/01/28