>> 鴨方遠隔授業ホームページ

惑星の気象学

[1週目 前半]

小高 正嗣(北大院理・地球惑星科学専攻助手)
odakker@gfd-dennou.org
2002 年 10 月 24 日
地球型惑星のうち, 大気をもつ金星・地球・火星についての お話です.


まず日本付近の今日の天気の様子を見てみましょう.
気象衛星「ひまわり」による可視画像を見ました.


「気象」という言葉は, みなさんもどこかで耳にされたことがあるでしょう. 大気中のいろいろな現象, 例えば雨や風, 黄砂などを表す言葉です. 今回は主に大気の動きに注目します.
まず「ひまわり」による 日本付近の雲の画像を見てみましょう. 雲は西から東へ動いており, 西風が吹いていることがわかります.


次に全球(地球全体)の雲の流れを, 衛星画像で見てみましょう.
雲は赤道付近では東から西へ, 中緯度付近では西から東へと 動いています. また中高緯度では雲の渦が見られます.


雲画像から, 地球の大気が動いていることはわかりました. 他の惑星ではどのようになっているのでしょう?
太陽系には9つの惑星があります. 図の 左側の大きな赤い星が太陽です.その周りを惑星が回っています.


さて, ここでみなさんに質問です. 太陽系にある惑星のうち, 大気を持っている惑星はいくつあるでしょう?
答えは水星を除く8つとなります. 宇宙には空気がないという イメージがありますが, 太陽系の惑星に限ると, 大気を持つ星が 大半なのです.


今日のお話の概要です.
太陽系の惑星のうち, 地球・火星・金星に注目します. 主に写真を眺めながら, 惑星大気の動きを 見ていきましょう.


3時間目は太陽系の惑星についての復習です. 4時間目には3つの惑星の気象についてお話します.


太陽系の惑星は, 太陽に近い方から順に水星・金星・地球・火星・木星・土星・ 天王星・海王星・冥王星です. 水星から火星までを地球型惑星, 木星から海王星までを 木星型惑星と分類します. 最後の冥王星は除きます. 2つのグループで, 星の大きさが違いますね?


地球型惑星と木星型惑星では, 材料や内部構造も違います. 左側が地球, 右側が木星です. 地球は表面から内部へ向かい, 岩石から成る地殻・マントル(図のココア色部分), 鉄とニッケルから 成る外核(黄土色部分)・内核(中心部分)という構造です. 他方木星は水素等の気体からなる部分が大半で(図の サーモンピンクの部分まで), 岩石と鉄?から成る核は中心のわずかな 部分です.


写真は左から金星・地球・火星です. 実際の大きさに関係なく, だいたい 同じ大きさにしてあります.
地球型惑星の特徴は, 表面を取り巻く大気(気体の層)がとても 薄いこと, そしてしっかりした地面(固体部分)があることです. 私達は地面に足で立つことができます.


写真は左から木星・土星・天王星・海王星です. この写真も実際の惑星の 大きさとは関係なく, すべて同程度の大きさにそろえてあります.
木星型惑星の特徴は厚い大気です. この大気の下に, しっかりとした 地面があるのかはよくわかっていません.


ここまでのスライドで見てきた地球の雲や惑星の写真は, どうやって撮影されて いるのでしょう?今の時代, 惑星の画像が欲しいなと思ったら, 適当な ホームページからダウンロードすれば簡単に手に入れられますよね.
そのおおもとの写真は, 地上そして宇宙から撮影されています. 地上では望遠鏡にカメラをつけて, 宇宙では主に 人工衛星に積んだカメラで撮影されます.


気象衛星「ひまわり」は, 皆さんも耳にされているでしょう. 「ひまわり」は人工衛星の一種で, ロケットで打ち上げられました. 地球の周りをぐるぐる回りながら, 雲や水蒸気の写真を 送ってくれます. この気象衛星のおかげで, 広範囲にわたる雲の動きが, いつでも見えるようになりました.


気象衛星には2種類あり, それぞれ長所短所があります.
「静止衛星」は赤道上にあり, 地球と同じ角速度で回転しています. 静止衛星の長所は, いつでも同じ場所を見ていられること, 逆に 短所は, 1つの衛星で見られる範囲が限られていることです. そこで5つの静止衛星で地球全体を監視しています.
「極軌道衛星」は地球の北極と南極を通るように回っています. 衛星が南北に回る間に地球が東西方向に回転するので, 地球のあちこちを1つの衛星で見ることができます. ただし, ある範囲を見る時間は少なくなります.


惑星の写真を撮る場合には, 探査機を宇宙へ飛ばします. この時, フライバイといって惑星の重力を利用して惑星に近づく 方法と, ある惑星の周りを, ちょうど地球の人工衛星と同じように ぐるぐる回らせる方法とがあります. フライバイの方が簡単です. また望遠鏡を積んで地球の周りを回っている人工衛星, ハッブル宇宙望遠鏡に よっても, 次々と新たな発見がなされています.


さて, 金星・地球・火星の写真を改めて見てみましょう. 金星は硫酸の厚い雲におおわれていて, 惑星表面は見えません. 地球は水の雲とともに陸地や海など表面部分も見えています. 最後に火星を見ると, 赤っぽい惑星表面がよく見えています. 火星の極地方に 見られる白い部分は, 凍った二酸化炭素です. 写真の下には惑星の大気 組成を示してあります.


上のスライドから, 地球型惑星の大気の特徴をまとめます.
どれくらいの割合で雲が見られるか, その雲は何からできているのか, そして大気の組成も惑星によりさまざまだということがわかりました.


3時間目では地球型惑星と木星型惑星の特徴, 雲や惑星の写真の撮り方, それから地球型惑星という同じグループの惑星でも, 大気や雲の様子は 異なるということを勉強しました.


スライドに使用した画像の取得先を示します.




Kuniko Egawa 2002-12-25