gnuplot(ニュープロット,グニュープロット)は,オープンソースのグラフ描画ソフトウェアです.Linux, Windows, MacOS で利用でき,数式からのグラフ描画とデータファイルからのグラフ描画に対応し,様々な出力形式(PNG, JPEG, GIF, EPS, PDF, SVG, etc...)をサポートしています.本ページでは,gnuplot の簡単な使い方と今年度の INEX 課題で用いられているバッチファイルの中身について簡単に説明します.
gnuplot のインストール
gnuplot は gnuplot.info からインストールファイルをダウンロードできます.また,Debian 系の Linux ならば,apt を用いることもできて,
# apt install gnuplot gnuplot-x11
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でインストールができます.
gnuplot とその使い方
今回は簡単な例として,$y=\frac{\sin x}{x}$のグラフを描画し,そのグラフを PNG 画像で出力する例を取り上げます.何らかのウィンドウシステム上で gnuplot を用いていることを仮定します.
gnuplot の対話モードの起動
シェル上で,
と打ち込みます.すると,
G N U P L O T
Version 5.0 patchlevel 3 last modified 2016-02-21
Copyright (C) 1986-1993, 1998, 2004, 2007-2016
Thomas Williams, Colin Kelley and many others
gnuplot home: http://www.gnuplot.info
faq, bugs, etc: type "help FAQ"
immediate help: type "help" (plot window: hit 'h')
Terminal type set to 'wxt'
gnuplot>
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と表示され,gnuplot> というプロンプトが返ってきます.これで gnuplot の対話モードが起動します.対話モードでは,gnuplot のコマンドをキーボードで入力してグラフの描画を行います.ちなみに,gnuplot の対話モードを終了して通常のシェル画面に戻るためには,exit と入力します.
グラフの描画
早速,$y=\frac{\sin x}{x}$のグラフを描画しましょう.2 次元のグラフを描画するためには,plot コマンドを使います.plot のあとにスペースを入れてその後に数式($x$の式)を書けば,新しい窓が出てきてグラフが描画されます.
Fig. 1:表示されるグラフ.
式には,+(加法),-(減法),*(乗法),/(除法),**(累乗)などの二項演算子が使えます.また,関数として,三角関数,双曲線関数,逆三角関数,指数・対数関数,特殊関数(例えばガンマ関数など)が使えます.
描画設定と再描画
gnuplot では,描画範囲,各軸の書き方などの設定を変更することもできます.ここでは新たな設定を施し,その設定の下で先ほどのグラフを再描画してみましょう.グラフの様々な設定を変更するためには set コマンドを用います.先ほどのグラフにはマス目が無かったため,例えばマス目を設定してみます.
また,$x$の範囲を$-15\leq x \leq 15$としてみます.
gnuplot> set xrange [-15:15]
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これらの設定を先ほどのグラフに適用するには,replot コマンドを用いてグラフの再描画を行います.
Fig. 2:再描画されたグラフ.
ファイルへの出力と gnuplot の終了
このグラフを画像ファイルへ出力することを試みましょう.これまでは,グラフのデータの出力先 (terminal) はウィンドウ (Linux ならば X-window-system) でした.これを PNG 画像ファイル (pngcairo) とします.pngcairo というのは,cairo というライブラリを用いて PNG 画像へ出力するモードです.出力先の変更は set コマンドを使って以下のように行います.
gnuplot> set terminal pngcairo
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このまま plot してしまうと,端末に PNG 画像のデータがそのまま表示されてしまいます.そこで,PNG 画像データを格納するファイル名(output)を指定します. ファイル名の指定は set コマンドを用いて以下のように行います.
gnuplot> set output "new.png"
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事前にグラフが描かれている状態であったとしても,この状態で再描画を行えば,PNG 画像データがファイルへ書き込まれます.
ただし,このままでは画像ファイルは gnuplot によってアクセスされたままであり,他のソフトウェアで開くことができない状態となっています.よって,画像ファイルを別のソフトで閲覧・編集したいときは,gnuplot で開かれている画像ファイルを閉じる必要があります.画像ファイルを閉じるために,gnuplot 自体を終了しても構いませんが,例えば
とするだけでもよいです.一方,再び画面 (X-window-system) へのグラフ描画へ戻るだけでも 画像ファイルは閉じられます.そのときは
gnuplot> set terminal x11
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とします.また,gnuplot の対話モードを終了して元のシェルに戻りたい場合は
とします.
バッチモード
上記に示した対話モードでは,いちいち順序を追ってコマンドを入力しなければならないため,例えばグラフの設定を使いまわしたいときには不便です.そんなときにはバッチモードを使います.バッチモードは,gnuplot のコマンドが列挙されているファイル(バッチファイル)を gnuplot 自身が読み込み,そのコマンドを逐次実行するというモードです.バッチモードでグラフを描画する際は,シェルから以下のように gnuplot へバッチファイルを読み込ませます.
それではバッチファイルを作成してみましょう.バッチファイルの作り方は簡単で,gnuplot のコマンドたちを実行順に 1 行に 1 つずつ書くだけです.今回はバッチファイルのファイル名を batch.gpl としましょう.
バッチファイル (batch.gpl) の中身:
set grid
set xrange [-15:15]
plot sin(x)/x
set terminal pngcairo
set output "new.png"
replot
exit
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バッチファイルが完成したら,gnuplot へ読み込ませます.
しばらく時間が経つとプロンプトが戻ってきて,new.png がカレントディレクトリに生成されているはずです.
inex 課題で用いた gnuplot バッチファイルを覗く
ここで,2022 年第 3 回で出題された課題で用いたバッチファイル (gnuplot.gpl) の中身を見てみましょう.ここでは各行での動作をわかりやすくするために,"#"から始まる説明文を付け加えました."#"から始まる文は,gnuplot ではコメント文として扱われ,読み込まれることはありません.なので,以下の通り"#"が入った状態でバッチファイルを記述しても,正しく実行されます.
課題で用いたバッチファイル (spectra.gpl) の中身:
reset #設定をクリーンにする
set datafile separator "," #データの区切りをカンマにする
set xlabel "Wavelength[nm]" #x軸のラベルを設定する
set ylabel "Flux Density[erg/cm^2/s/Ang] #y軸のラベルを設定する
set xrange [:] #x軸の範囲を設定する
set format y "10^{%L}" #y軸のメモリ表示を10^X乗にする
set logscale y #y軸を対数軸にする
plot "GJ436_spectraC.csv" using 1:2 with lines title "spectra"
#GJ436_spectraC.csvの1行目と2行目を用いてグラフを書く
set terminal pdfcairo #描画モードをpdf出力モードに変更
set output "spectra.pdf " #出力ファイルを設定
replot
exit
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