図6, δ18O値の鉛直分布.
(月間海洋/号外 No.30,2002 豊田さん提供)
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海氷の結晶構造の解析から粒状氷(granular ice)が卓越していることがわかりました.
実は粒状氷はfrazil iceの集積だけではなく, 海氷上の積雪に海水が浸み
込んで氷化することによってできたsnow iceによっても形成されます
(サロマ湖観測 照度計回収
参照).
従来の研究では, 氷上の積雪は断熱材として働き氷の成長を妨げるものと考えられ
ていました
(サロマ湖観測 積雪観測
参照). しかし, 近年研究が進むに従ってsnow iceの影響も無視できないこと
が分かってきています. では, 冬期間降雪の顕著なオホーツク海においてsnow ice
はどの程度寄与しているのでしょうか?
■ 観測方法
海氷が海水起源であるか雪起源であるかということを確かめるためには,
酸素同位体比δ18O(※)を測定します.
実際には, 回収した海氷サンプルを鉛直方向に2cm間隔で切り取り常温で融解し,
融解水のδ18Oを測定するという作業を行いました.
δ18Oを用いたsnow iceの判別の条件を以下の通りです.
- granular iceであること.
- δ18Oが負の値を取ること.
※酸素同位体比とは海氷とスタンダード水(国際的に規定)の18O/16Oのそれぞれの値の比から1を引き103倍したものです.
δ18O=[(18O/16O)ice/(18O/16O)water-1]×103
18Oに比べて軽い16Oを含むH2Oの方が蒸発し
やすい(同位体分別)ため, 雨や雪のδ18Oは海水のそれより小さくなります.
■ 解析結果 (図6)
図6によれば, snow iceは表面付近にだけではなく海氷内部にも存在する
ことが分かります. snow iceが形成されるのは海氷表面ですから, 海氷が発達する
過程で氷盤同士が乗り上がり積み重なって形成されたことを示唆しています.
量的な見積りから, オホーツク海南部の全氷厚に対するsnow iceの比率は約1割と
推定されました. この値は南極域の値の下限程度となっています.
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