RESEARCH

ippuku


OUTLINE1

自分は一体何者なんだろう? 宇宙人っているのかな?
これらの疑問は誰しも一度は考えたことがあるのではないだろうか。
今まで様々な観測や探査による研究が行われてきたが、地球の外で生命体は発見されていない。
これは生命が存在するために惑星や衛星が満たさなければならない条件があることを示している。
その中で最も一般的なのは水が存在するかどうかだ。
地球上の生物に水を必要としないものはいない。
それでは地球の水はどのようにして地球にやってきたんだろうか?
実は地球の水の起源は未だ明らかになっていないのである。

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現在のところ最も有力だとされている水の起源は、後期重爆撃期に地球に集積した炭素質コンドライト的物質である。
後期重爆撃期とは、月ができたとされるイベント(ジャイアントインパクト)の後に地球に大量の隕石が降り積もった期間のことである。
これは月のクレーターの年代を調べることによって分かっている。
コンドライトとは隕石の一種であり太陽系形成時の組成を保存していると考えられている始原的隕石である。 さらにコンドライトは大まかに炭素質コンドライト、エンスタタイトコンドライト、普通コンドライトに分けることができ、中でも炭素質コンドライトは酸化的物質という点で重要である。
それは酸化的な物質でなければ水を保持できないからである。
したがって地球の水が後期重爆撃期に地球に集積した炭素質コンドライト的物質によりもたらされたと考えると、その集積物質は酸化的であったことになる。
しかし近年の研究で集積後期の集積物質は還元的であったことが明らかになった。

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仮に後期集積物が還元的組成であったとすると、地球の水は集積主段階において供給されたことになる。
供給された水がジャイアントインパクト後にも地球に残っていたとき、還元的物質が後で供給されたらどうなるだろう?
水は全て還元され失われてしまうのではないか? 僕は集積後期の地球マントルの酸化還元状態を推定することで、地球の水の起源について新たな可能性を提示できないか模索しています。

ちゃんとした背景

宇宙惑星科学が掲げる最も重要な目標の一つに地球の普遍性と特殊性の理解が挙げられる。様々な手法によ る宇宙惑星解明の試みが行われているにもかかわらず、我々の住む地球の様に生命を持つ惑星は現時点で他に 見つかっていない。これは生命誕生のために惑星が満たさなければならない条件があることを示唆している が、その条件として最も一般的なものは惑星が水を持っていることと考えられている。地球上に水を必要とし ない生物はいない。では地球はいかにして水を獲得したのだろうか?この問いに対し未だ信頼性の高い結論は 出ていないが、月形成衝突(ジャイアントインパクト)後に水を含む隕石が大量に降り積もったのではないか というのが現在の有力な説である。 月のクレーター年代などから現在から約40 億年ほど前、地球は大量の降着物質を獲得したと考えられてい る。この後期重爆撃期に地球に降り積もった物質の層はレイトべニアと呼ばれている。レイトべニアは地球の 揮発性物質や水の起源として有力なものとされてきた。これは地球がスノーラインよりも太陽に近い位置にあ ることや、ジャイアントインパクトにより水が散逸してしまうと考えられていたことなどが背景にある。しか し近年の研究はジャイアントインパクト以前に地球が水を獲得し、そして失わずに現在まで保持した可能性を 示唆している。したがって後期集積以前に地球に水が供給された場合のシナリオを改めて考え直す必要が生ま れた。 また最近の研究はレイトべニアの成分が炭素質コンドライト的物質ではなく、エンスタタイトコンドライト 的物質に近いことを明らかにした。(Fischer and Kleine., 2017) コンドライトとはコンドル―ルと呼ばれる粒 を保持する始原的な石質隕石のことである。地球の水の起源というものを考える際、炭素質コンドライトが重 要である。炭素質コンドライトは他のコンドライトと異なり、水や揮発性物質を持つためである。コンドライ ト群の分布と太陽距離に関する研究から炭素質コンドライトの母天体は、スノーラインよりも外側で形成され たと考えられている。 後期集積における集積物の組成は、当時の地球の酸化還元状態を決定づける。炭素質コンドライトは非常に 酸化的な隕石である。したがってレイトべニアが主に炭素質コンドライトの集積によりできたものだと考える と、当時の地球は非常に酸化的な環境であったという結論になる。これは他の地球化学的研究とも関連があ る。例えばマントル中の強親鉄性元素過剰の解釈である。鉄-ケイ酸塩間の分配において、鉄に分配される傾 向が非常に高い元素を強親鉄元素といい、地球マントル中の強親鉄元素存在量は理論的に考えられていたもの と比べ多いことが分かっている。(Drake and Righter., 2002) この問題は、金属鉄を含まない炭素質コンドラ イトが地球のレイトべニアの起源とする考え方により説明がつく。また近年の惑星形成モデルの有力な候補の Nice モデルとも整合的である。これらの地球惑星科学的研究は、酸化的なレイトべニアを示唆するものであ る。しかし上で述べた通り、従来のレイトべニアが酸化的であったという考えには見直しが求められていると 言える。 そこで私は、レイトべニアとして集積された物質が炭素質コンドライト的物質ではなく、エンスタタ イト的物質であることを仮定して当時の地球の酸化還元状態を考察している。