VITF (VHF InTerFerometer)


  雷放電進展により放射されるVHF波帯インパルス性電磁波を2台のアンテナで受信し,ディジタル記録する。これにより, 2台のアンテナで受信した電波の到達時間差から,雷放電位置に相当する電磁波の到来方向を推定することができる。このディジタル干渉法を用い, スプライトを励起した雷放電の放電進展過程を明らかにすることを目的として,2台のVHFアンテナとデータ処理エレクトロニクスを開発し, 搭載した [Morimoto et al., 2011]。Fig.1にVHF干渉計 (VITF : VHF IntTerFerometer) のエレクトロニクス部と, Fig.2にアンテナ部の写真をのせる。また,Table 1にVITFの仕様を載せる。

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Fig.1 VLFレシーバエレクトロニクス部 (VLFR-E)。               Fig.2 VLFレシーバアンテナ部 (VLFR-ANT)。

Table 1 VLFRの諸元
Item Values
Frequency Range 1 - 30 kHz
Resolutkon 14 bit
Sampling Frequency 100 kHz
Antenna Type Monopole Antenna
Antenna Length 15 cm
VLFR-E Dimension 185 × 87 × 75 mm3
VLFR-E Mass 0.3 kg
VLFR-E Power 8 W

  アンテナはISS/JEMへの搭載性の観点から,パッチ型のアンテナとし,ポート共有利用実験装置の底面に取り付け天底方向を指向するように設置する。 観測する周波数は70 - 100 MHz帯とし,アンテナ後段に設置する帯域通過フィルタおよび増幅器もこれに順ずる。 ポート共有実験装置内部に設置するデータ処理用のエレクトロニクスでは,受信信号をサンプリング周波数が200 MHz,分解能が8 bitでA/D変換して記録する。 雷放電から放射されるVHF波帯電磁波は,インパルス的であるため,内部メモリを分割し, 設定閾値を超えた際に数マイクロ秒間の波形を記録するシーケンストリガ手法を用いる。すなわち, 外部コマンドにより計測を開始したA/D変換器は設定した閾値を越える信号が入力された際に,1フレーム(=数マイクロ秒)分のデータを記録する。 電磁波の到来方向推定のためには,2系統の完全同期が必須であり,両A/D変換器間でクロックを共通または同期し,一方の信号を基準として閾値判定を行い, 他方へのトリガを行う。一般に,一回の雷放電から放射されるVHF波帯の電磁波は数千パルスであることが知られており,本ミッションでは, このうち強い100パルス程度をターゲットに機器の設計を行うこととする。

  到来方向推定精度は1.5°を見込むが,これは想定視野内で発生した雷放電位置を,幅約10 kmの(楕) 円状の地域に推定することに相当する。