Science Objectives


  JEM-GLISM (Global Lightning and sprIte MeasurementS on JEM-EF) ミッション では,国際宇宙ステーション (ISS) の日本実験モジュール (JEM) 曝露部 (EF) に設置されるポート共有利用実験装置内部に,CMOSカメラ2台,フォト メタ6台で構成する光学観測機器と,VLFレシーバ1台,VHF干渉計1式からなる電磁波動計機器を設置し,全球的な雷放電,TLEs,TGFsを生起する 雷放電を観測する。その目的は,以下にまとめられる。


(1) 全地球規模の雷放電および高高度放電発光現象の時間空間分布の解明
JEM-GLISMでは,光学観測機器による夜側での過渡発光の検出,およびVHF干渉計による昼側・夜側での雷放電電波の検出を行う。これによって,雷 放電と高高度放電発光現象の全球的発生頻度分布を世界で初めて定量的に特定することを目的とする。この全球発生頻度分布に,高高度放電発光によ る微量気体生成の数値計算結果を組み込むことによって,雷放電および高高度放電発光現象が地球大気組成変化に対して及ぼす影響を定量的に解明する ことができると期待される。


(2) 高高度放電発光現象の水平空間構造の解明
JEM-GLISMでは,2台のCMOSカメラ,6台のフォトメタによって,雷放電および高高度放電発光の光学天底観測を行う。これに加え,VLFレシーバで 雷放電起源のホイッスラー波と,世界で初となる宇宙空間からのVHF干渉計観測を行う。これによって雷放電路の時間空間発展と,高高度放電発光の 水平空間構造を明らかにし,雷放電水平電流とそこから放射されるEMPが高高度放電発光の発生条件に果たす役割を特定することを目的とする。これ によって,スプライトの発生メカニズムに深く関わる「発生条件」を特定し,主流とされてきた数々のモデルに対し大きな修正を迫るとともに,これ までに無い新たな発生メカニズムを確立すると期待される。


(3) 高高度放電発光現象の近紫外域における発光スペクトルの解明
JEM-GLISMでは,近紫外域に感度を持つフォトメタを4台搭載している。高高度放電発光の近紫外域における絶対強度の測光観測を行う。0.05msとい う高い時間分解能で定量的な観測結果を得ることを目的とする。特にN2 2PバンドとN2+ 1Nバンドの発光 スペクトルの精密観測から,発光を引き起こす電子のエネルギーを特定することによって,電子の分布関数の推定と電子加速メカニズムの妥当性を評価 できると期待される。


(4) 地球ガンマ線の発生起源の解明
JEM-GLISMでは,光学観測機器とVLFレシーバ,VHF干渉計を駆使し,地球ガンマ線を引き起こす雷放電の特性を明らかにする。JEM-GLISMで得られる 地球ガンマ線生起雷放電のプロパティと,ASIM, TARANISで得られる地球ガンマ線データから,地球ガンマ線が雷放電のどの放電プロセスで発生したの か,発生起源はどこにあるのか,そもそも地球ガンマ線の起源は雷なのかということを,世界で初めて解明すると期待される。